BIM・CIMをスタートしようとしたときに、最初に突っかかるのがパソコン選びでは無いでしょうか。
これまでのAutoCAD等のCAD利用だと、事務用の中~低スペックのパソコンでも対応可能でした。しかし、BIM・CIMの利用だと、グラフィックボードを搭載したハイスペックなパソコンが求められます。
そこで本投稿では、BIM・CIMに必要なスペックを洗い出し、パソコン選びのポイントを説明していきたいと思います。
BIM・CIMに必要なスペック
まず、パソコンを買うときに見なければいけないところはどこでしょうか。
BIM歴5年以上の管理人は、以下の順でスペックを見ています。
- OS
- ディスプレイ解像度
- ストレージ
- メモリ
- グラフィックボード
- CPU
なぜこの順でスペックを見ているのでしょうか?順番に解説していきたいと思います。
OS
Windowsのものを選んでください。
OSの選択肢としてMacやLinuxもありますが、BIM・CIMソフトの大半はWindowsのみ対応しているのが現状です。
ディスプレイ解像度
フルHD(FHD)以上のものを選んでください。画素数でいうと1920×1080以上です。
画素とは、画面に表示する色の粒のことです。そして画素数とは、画面のなかの画素の数のことです。
たとえば、1920×1080の画素数だと、横に1920個・縦に1080個の色の粒があり、それぞれ違う色で表示できるということです。そのため、画素数の大小が画面に見やすく表示できる情報量を左右するということです。
小型のノートPCだと、1366×768程度のものも販売されていますが、必ず1920×1080以上のものを選ぶようにしてください。
解像度の小さいマシンだと、BIM・CIMの作業だけではなく、通常作業の作業効率にも影響を及ぼします。
ストレージ
SSDの256GB以上のものを選んでください。512GB以上がおすすめです。
SSDとはソリッドステートドライブのことです。ストレージの別の選択肢として、HDD(ハードディスクドライブ)があります。
HHDは回転しているディスクに磁気的にデータを書き込むストレージです。昔からある技術なので廉価な反面、データの読み書き速度に難があります。
一方、SSDは電気的にデータを書き込むストレージです。高価な反面、データの読み書きが非常に高速です。
こちらも、SSDを選択することによって、BIM・CIM以外にも通常作業の効率が向上します。かならずSSDを選択してください。
容量は256GB以上にしてください。128GBだと、通常業務用のソフト、数種類のBIM・CIMソフト、BIM・CIMプロジェクトデータだけで容量が一杯になってしまいます。
512GBあれば、まず安心だと思います。
メモリ
8GB以上を選択するようにしてください。16GB以上がおすすめです。
メモリの大小によって、パソコンで動かせるプログラムの数や、計算のために確保できるスペースが決まります。
8GBあれば大抵のBIM・CIMソフトは単独で快適に動きます。しかし、BIM・CIMソフトと同時にOfficeソフト(Outlook, Excel, Teams等)やコミュニケーションツール(Teams, Slack, Zoom等)を使う場合には16GB以上を選択してください。上述の通り、たくさんのプログラムを快適に利用するためにはメモリ量が必要となります。
一方で24GBや32GBは、現在のBIM・CIM環境においては過剰スペックといえます。ただし、点群ソフトを利用する場合、メモリをかなり消費するため32GBが望ましいと言われています。
グラフィックボード
Nvidia QuadroやAMD FirePro, AMD Radeon Proのものを選択するようにしてください。
グラフィックボードについては種別や型番が多く存在するため、一概に良し悪しは言えません。しかし、上述の3種類に関しては多数の実績があり、BIM・CIMソフトの推奨グラフィックボードとされていることが多いです。これらを選んでおけば問題ないでしょう。
また、上述のもの以外にも、Nvidia GeForceやAMD Radeon等のグラフィックボードも存在します。主にゲーミング用のグラボですが、コスパは良く、一定の性能は発揮してくれると思います。
一方、避けたほうがよいのがIntel HDグラフィックスです。これはIntelのCPUにオマケで付いているグラフィックボードです。事務作業程度であれば十分な性能ですが、BIM・CIMには向きません。そのため「Intel HDグラフィックス」の記載があるものは「実質グラフィックボード無し」ということですので注意してください。
※VR(バーチャルリアリティ)を積極的に利用する場合、種別や型番まで意識して、かなりお高いグラフィックボードを選定する必要があります。本記事では紹介しませんが、注意が必要です。
CPU
CPUについては、あまり意識する必要はありません。
「CPUって、パソコンの頭脳だから大事じゃないの?」という声が聞こえてきそうですが、実際にあまり意識はしなくても大丈夫です。というより、選択肢が無い場合が殆どです。
なぜなら、ここまでに紹介したスペック(ストレージ・メモリetc)を上回っているPCであれば、それなりのCPUが搭載されるようになっているからです。
実際の商品紹介・購入ページを見てもらえばわかると思いますが、ストレージやメモリを選んでいき、BIM・CIMに耐えるPCを絞っていくと、CPUの選択肢が無い場合が殆どです。
必要なスペックまとめ
ここまでで紹介したスペックの一覧を以下にまとめます。
– | 最低スペック | 推奨スペック | 選んではいけないもの |
---|---|---|---|
CPU | (勝手に決まる) | (勝手に決まる) | (勝手に決まる) |
メモリ(RAM) | 8GB | 16GB以上 | 8GB未満 |
ストレージ | SSD 256GB | SSD 512GB以上 | SSD 256GB未満 HDDのもの |
ディスプレイ解像度 | FHD(1920×1080) | FHD(1920×1080)以上 | 1920×1080未満 |
OS | Windows | Windows | Mac Linux |
グラフィックボード | Nvidia Quadro AMD Radeon Pro AMD Fire Pro | Nvidia Quadro AMD Radeon Pro AMD Fire Pro | Intel HDグラフィックス |
BIM・CIMにピッタリのノートパソコン
最後に、BIM・CIMに適したノートパソコンの実例を見ていきましょう。
結果から先に言うと、オススメはLenovo社のThinkpad PシリーズとHP社のZBookシリーズです。
【Lenovo】ThinkPad Pシリーズ
LenovoのThinkPadといえばキーボード真ん中にある赤ポチで有名ですね。
Lenovoは中国の会社のため敬遠してしまいがちですが、ThinkPadのブランドは元々、米国の巨大IT企業であるIBMが持っていたものです。そしてThinkPadの開発はIBM時代から変わらず、日本の大和研究所(神奈川県)で行われているため、安心感は非常に高いです。
安くて壊れにくくてデザインがシンプルなため、世界No1ブランドとして有名なノートPCのシリーズがThinkPadです。そんなThinkPadシリーズの中でも、グラフィックボードを搭載したモデルがThinkPad Pシリーズです。
Lenovo Pシリーズの一覧はコチラです。
執筆時点で、筆者が選ぶとすれば、ThinkPad P14sの「製造・建築3次元CAD向けベーシック」モデルですね。
これは14インチモデルなので、持ち運びが多少大変になっても大画面が良いという方は、ThinkPad P15の製造・建築3次元CAD & 解析/CAE向けパフォーマンスあたりをオススメします。
【HP】ZBookシリーズ
HPのノートパソコンといえば、とにかく安いことで有名です。ビジネス用、個人用など様々なものが売られています。そんなHPのシリーズの中でも、グラフィックボードを搭載したハイエンドシリーズがZBookシリーズとなります。
HP Zbookシリーズの一覧はコチラです。
執筆時点で、筆者が選ぶとすれば、ZBook Firefly 14 G7のスタンダードモデルです。
持ち運びが大変になっても大画面が良いという方は、ZBook Firefly 15 G7を購入すれば良いと思います。15 G7やStudio G7は過剰スペックです。
まとめ
この記事では、BIM・CIMに使えるノートパソコンのスペックとその実例を紹介しました。これからBIM・CIMを始めようと思っている方々のノートパソコン選びの一助になれば嬉しい限りです。
注意してほしいのが、この記事で紹介したスペックは管理人の感覚的なところが大きいということです。大きく外れることは無いと思いますが、各人の使いたいBIM・CIMソフトごとに、推奨されているスペックは違ってきます。
たとえば代表的なBIMソフトのRevitやArchiCADであれば以下のようなページがあります。
これらはGoogleで検索すればすぐに出てきますので、皆様も各BIM・CIMソフトの公式サイトに立ち寄り、その推奨スペックと照らし合わせてからノートパソコンを選ぶようにしてくださいね。
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