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奨励金10%でも従業員持株会の積立は損をする話

資産運用

私の勤めている会社には従業員持株会があります。

持株会による株式購入については、購入額に対して10%の奨励金が支給されます。

一見お得なように見えますが、本当にお得なのでしょうか?

素人なりに考えてみた結果を共有します。

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持株会での株式購入は損?

購入額に対して10%の奨励金が支給される持株会の場合、たとえば30,000円を投じたとすれば、33,000円分の株式を受け取ることが出来ます。

言い換えると、購入時点で10%の含み益が発生するという状況です。一見オトクな制度に見えます。

しかし、自分の勤めている会社が成長しない(株価が伸びない)とするならば、それは積立投資先として正解であるといえるでしょうか?

また、仮に、その積立分を成長性の高い株式に投じた場合と比較して、どれくらいの差が生まれるでしょうか?

結論を先に述べてしまうと、株価が伸びないのであれば持株会の積立は損です。

順を追って見ていきましょう。

仮定の整理と試算

まず、従業員持株会による積立は、以下のようなパラメータを持つと仮定します。

持株会へ投資した場合の仮定

  • 奨励金は投資額の10%
  • 配当利回りは年2%
  • 会社の株価は1年あたり0.5%下落

配当利回りは日本企業の平均値といわれる2%を採用しました。日本企業は米国企業に比べ、累進配当政策等の株主還元を取っていない場合が多く、配当金の上下が激しい銘柄も多いです。このシミュレーションでは、株価に対して安定的に2%の配当利回りがあるということにしておきます。

株価の下落率は1年当たり0.5%の下落と仮定しました。0.5%の下落を具体的な数字に置き換えると、100円の株価が30年後に約85円になっている計算です。

ろくにインフレも起こっておらず、縮小していくであろう日本の市場環境と照らし合わせれば、(感覚的ですが)まともな割合だといえるでしょう。

成長していく株へ投資した場合の仮定

一方、比較する投資対象は、安定的に3%の上昇が見込める株式とします。S&P500のインフレ調整後の平均利回りが6%程度といわれているぐらいですから、比較的控えめな値を採用しているといえます。

注意点

この仮定についての注意点ですが、現実的には株価が「安定的に0.5%の下落」したり「安定的に3%の上昇」したりすることはありません。

通常、株価は「世界経済」「日本経済」「業界全体」「会社個別」の事情による波(上昇局面・下降局面)があることが普通です。

あくまでも、このシミュレーションは現実ではありえない条件だ、としてとらえておいてください。

それでは、仮に毎月30,000円を積み立てていくとして、具体的な数字を見ていきましょう。

持株会に投資した場合の資産状況

1年目投資総額

1年目の投資総額を計算してみます。

まず、30,000円の積立に対して奨励金が3,000円付与されます。これを12か月分ですから、配当抜きの資産総額は以下のように計算できます (以降、税金は無視します) 。

 (30,000円 + 3,000円) * 12ヶ月 = 396,000円

ここに配当の2%が効いてきます。そのため、1年目終了時点での資産総額は以下のように計算できます。

 396000 * 1.02 = 403,920円

2年目投資総額

次に、2年目の資産総額を計算していきます。

このとき、1年目終了時点に保有していた403,920円の株の価値は日本経済の縮小に伴って、0.5%下落してしまいます。悲しきかな。

 403,920円 * (1 – 0.005) = 401,900円

さて、2年目の新規買い付け総額は1年目と同じ396,000円です。これらの合計に配当の2%を効かせると、2年目終了時点の資産総額となります。

 (401,900円 + 396,000円) * 1.02 = 813,858円

3年目以降投資総額

3年目以降も同様の手順で計算できます。
1年目~10年目終了時点での結果は以下のようになります。

年数積立総額資産総額
1年目360,000403,920
2年目 720,000813,858
3年目1,080,0001,229,904
4年目1,440,0001,652,150
5年目1,800,0002,080,687
6年目2,160,0002,515,609
7年目2,520,0002,957,012
8年目2,880,0003,404,991
9年目3,240,0003,859,646
10年目3,600,0004,321,074

順調に資産総額が伸び、10年間でおよそ700,000円の利益が出ています。悪くない投資先といえるでしょう。

次に、成長する株に投資したケースをみてみます。

成長する株に投資した場合の資産状況

こちらは単純に、1年間の積立金額360,000円に対して、毎年3%の利益が見込めます。なお、持株会ではないので10%の奨励金はありません。

1年目~10年目終了時点での結果は以下のようになります。

年数積立総額資産総額
1年目360,000370,800
2年目720,000752,724
3年目1,080,0001,146,106
4年目1,440,0001,551,288
5年目1,800,0001,968,627
6年目2,160,0002,398,486
7年目2,520,0002,841,241
8年目2,880,0003,297,278
9年目3,240,0003,776,997
10年目3,600,0004,250,806

10年間でおよそ65万円の利益が出ています。
この時点では、持株会に分があるように見えます。

10年間のパフォーマンスを比較

両者をグラフにまとめました。

縦軸は積立て総額[円]、横軸は2019年を基点とした[西暦年]となっています。

積立総額(青)に対して、持株会に積立てた場合(橙)と、成長する株に積立てた場合(灰)の両者とも上回っています。

10年間では、ほぼ同等の成績といえます。持株会は投資時点で10%の上乗せ額あるため、若干有利なようです。

では、30年間積立てるとすると、どうなるでしょうか。

30年間のパフォーマンスを比較

30年間積立をパフォーマンスを比較します。

縦軸は積立て総額[円]、横軸は2019年を基点とした[西暦年]となっています。

30年間という長期で見た場合、成長する株式を購入したほうが良い成績を残しています。両者とも、積立総額に対しては大きくプラスとなっているので、資産運用としては成功の部類でしょう。

しかし、それぞれの利益額はおよそ3,000,000円も違ってくるという結果が出ました。

 積立て総額:11,160,000円
 資産総額(持株会):16,407,696円 (+147%)
 資産総額(成長株):19,468,023円 (+174%)

ちなみに、持株会の株価が下落しない(30年間株価変動無し)として再計算したとしても、20年経てば成長株にパフォーマンスで負けます。複利が効いてくるのです。

パフォーマンス比較

実際に計算してみて、すこし意外に思っています。

というのも、持株会では株式を買いつけした時点で10%の利益があるわけです。感覚的に、他の株式にパフォーマンスで負ける訳が無いと思っていました。

しかし、年率0.5%ずつ株価が下落すると仮定すると、シンプルな年率3%積立に大きく成績が劣ります。

上述しましたが、年率0.5%の下落というのは、100円の株が30年後に85円になっている計算です。縮小していくと言われている日本経済において、ありえない数字ではありません。

一方、年率3%の利回りを考えると、100円の株は30年後に250円の価値になります。感覚よりも高い値段がついています。

以上、恣意的にパラメータを決めたシミュレーションによる結果でした。

現実の話

現実の話に戻ると、もしかしたら、持株会の株が下落し続けることは無いかもしれません。

安定的に3%以上の成長が見込まれる株であっても10年、20年後には成長が止まっているかもしれません。

そもそもの話、安定的に3%の成長が見込まれる株を見つけること自体、予知能力でもないと無理です。

経済の動向は誰にもわからないです。ノーベル経済学賞の教授でも予想は出来ないと言われています。

これはあくまでもシミュレーションにすぎません。

最後に

今回の検証では、たとえ10%の奨励金が支払われようとも、成長性の見られない株式に投資を行うことは最適解ではない、ということを検証してみました。

この投稿には書きませんでしたが流動性分散投資の観点からも、持株会は気軽にやる投資ではないと考えています。

ここまで読んでみて、持株会以外の投資先ってあるんか?と思った方は、「全世界株式」や「全米株式」の投資について調べてみたら良いと思います。

前述のとおり、S&P500(アメリカ版の日経平均株価のようなもの)のインフレ調整後の平均利回りは6%程度ですので、この指数へ投資をすることでアメリカの経済成長を取り込みながら、ユルく堅実な投資を実践することが出来ます。

この投資法、世界ではスタンダードな投資法なのですが、日本では投資=博打と考えられている節があるため、まだまだ根付いておりません。

具体的な考え方や数字は『お金は寝かせて増やしなさい』という本に詳しく書かれています。漫画つきの入門書で、堅苦しくないため、初心者でも取っ付きやすい本です。興味のある方は、試しに読んでみることをオススメします。

なお、ここまでを踏まえた現実世界での最適解は、持株会奨励金が発生したあと即引出です。会社の持株会担当者に怒られたり、持株会制度が無くなったりしても、知りませんが・・・笑

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