ケメックスでハンドドリップする特別な時間と一杯のコーヒー
僕のライフスタイルの中で、決して欠かすことの出来ないものの一つである「コーヒー」。それも、アナログに、自分の手で淹れるハンドドリップに絶対的な拘りがある。

仕事場が自宅なこともあって、1日に1回ハンドドリップでコーヒーを淹れることが、気持ちを切り替える為の儀式的なものになっている毎日。
一息つく為に啜ったり、休日は映画鑑賞のお供にしたり。何より自分好みの味になるよう淹れ方を試行錯誤するのがとても楽しかったり。
今日まで様々なコーヒー器具を試してきたけれど、今までメインで使用していたコーヒーサーバーが割れてしまったことをきっかけに、個人的な最終着地点である”CHEMEX / ケメックス”のコーヒーメーカーを迎え入れました。

ケメックスとは、アメリカにて1941年に誕生したコーヒーメーカー。
アメリカに移り住んだドイツ人科学者が、実験室のフラスコでコーヒーを淹れている所から原型を発案したのが始まり。
大きくくびれた形状に、ウッドで持ち手を付け、革紐で括る特徴的なスタイル。なんの情報もなくこのガラス瓶を見ても、誰もコーヒーメーカーとはわからないんじゃないだろうか。
一般的にハンドドリップのコーヒーというと、ドリッパーとサーバーが別々になっているものだけど、ケメックスは一体型。上部に円錐型のペーパーを差し込んでコーヒーを抽出する。
この個性的で機能的なデザインが高く評価され、”ニューヨーク近代美術館(MoMA)”にて永久展示品に認定されていたり、アメリカを代表する家具デザイナー”チャールズ&レイ・イームズ夫妻”の愛用品であったという逸話もあります。
ハンドドリップに拘りがあるコーヒー好きであれば、一度は憧れる存在なはず。(ずっと憧れていた。)

因みに、ケメックスのラインナップには機械製造による「マシンメイド」と職人が手吹きガラスで作る「ハンドブロウ」という物があり、更に1980年代頃までに製造されたものはヴィンテージ的価値を得て「オールドケメックス」と呼ばれる。
この度、うちに来たのは1980年代に作られたオールド物のハンドブロウ 6Cup(6杯用)。
正直、オールドケメックスだからといって大きな違いはないのだけれど(もちろん気持ちは違う)、現在製造されているものであっても職人が手吹きによって作り上げたハンドブロウのケメックスには、厚みのあるガラスに加えて断面がほんのりと緑色に光るという魅力がある。
一般的なコーヒーメーカーと比べると少々お高いけれども、こういったクラフトやプロダクトとしての美しさがあるからこそ愛着と贅沢を感じられるもの。

コーヒーというのは様々な形で、多くの人のライフスタイルに組み込まれているもの。
自動販売機の缶コーヒー、コンビニエンスストアのコーヒーマシン、豆を入れておくだけで自動で抽出してくれる自宅用コーヒーメーカー。
それぞれ良さは違うけれど、やっぱり人の手で丁寧に淹れたコーヒーは香り高いし、より味を感じられる。一杯のコーヒーに対する向き合い方が全然違うはず。
毎日とは言わずとも、休日だけでも。
ゆっくりと丁寧にハンドドリップしたコーヒーと過ごす時間は心地よく、お気に入りの器具で淹れるコーヒーは理屈を超えた美味しさを感じるものです。